女性にとって、生理は憂鬱なもの。
体の不調だけではなく、気分もイライラしたり落ち込んだり……「せめて生理中だけでも家でゆっくり体を休めたい」という方は多いでしょう。
しかし労働基準法では、生理休暇についてきちんと規定が設けられています。
生理休暇について詳しく知り、不調と上手に付き合うヒントにしてください。
1.労働基準法でどう定められているの?
労働基準法第68条では、『生理中の休暇』について規定されています。
この制度を簡単に説明すると、「生理中の就業が著しく困難で休暇を請求した場合、使用者はそれを受理しなければならない」ということです。
“著しく”と前置きされていることがポイントで、生理だから誰でも休暇を取得できるわけではなく、就業できないほどの不調の場合のみ請求可能とされています。
正社員、派遣、パートなど雇用形態によらず、女性なら誰でもこの制度を利用できます。
有給休暇のように数日前から相談・提出すべきものでもなく、当日に“つらい”と感じた時点で申請できます。
休む時間も本人の意思で決められるので、1日休む方もいれば、半日、数時間など部分的な単位でも取得可能。
医師の診断書なども基本的には必要ありませんが、どうしても証明する必要がある場合は、会社が別の社員に証言を求めるケースもあります。
労働基準法では、生理休暇の取得日数に上限は設けていません。しかし会社独自の措置として、「生理休暇は月に〇日までとする」など規定していることがほとんどです。
生理休暇でも給与が発生するか否かは、法令では規定されていません。厚生労働省の調査によると、2015年の時点で、生理休暇を有給扱いにしている企業は25.5%。2007年度の調査では42.8%だったことから、生理休暇に対してポジティブな取り組みをしている企業は減少傾向といえるでしょう。
2.生理休暇ってとれる?とれない?
ある企業がおこなったアンケート調査によると、生理休暇を取得した経験のある女性は、たった7%。
取得経験者の内訳を見ると、『年に数回だけ取得した』が80%、『月に1~2日』が18%という結果でした。
労働基準法では、生理休暇は女性の立派な権利です。その意味では、生理休暇は「取れる」の一択でしょう。
しかし現実は、「制度はあっても利用しにくい」の声が多数。
「生理の不調はほとんどの女性が経験しているはず。自分だけ生理を理由に休むのは気が引ける」「上司を含め、社員の半数が男性。『生理』というワードは恥ずかしくて出せない」など、女性たちの声から生理休暇に対する課題が浮き彫りになっています。
また、「生理休暇として申請するのは気まずいので、通常の有給休暇として取得した」という声もチラホラ。
「制度としては確立されているものの、活用しにくい」……女性にとっての新しい働き方を目指すなら、この現状をどう打開していくかがポイントといえるでしょう。
3.徐々に始まっている「生理休暇を有給休暇へ」「トイレに生理用品を設置」
「生理休暇は無給」など生理に理解を示さない企業がある一方で、「生理休暇は有給扱いとする」などポジティブな働き方を試みる企業もあります。
たとえばある企業では、以下のような取り組みをはじめました。
■生理休暇は有給扱い
生理休暇を無給にしてしまうと、どれほど体調が思わしくなくても生活のために就業を続ける……という女性は少なくないでしょう。
そこである企業は、『生理休暇を取得する場合、月に1日までは有給とする』という規定を設けました。これは通常の有給休暇とは別途のものです。
月に1日までと上限は定められているものの、5~7日程度の女性の生理期間にあてはめると十分な期間といえます。
「つらかったら無理せず休んでね」とまるでエールを送られているような規定に、当該企業で働く女性たちは心身ともに救われたことでしょう。
■トイレに生理用品を設置
生理がはじまるタイミングは、本人でさえなかなか予測がつかないもの。
勤務中に生理になって「制服が汚れてしまう!」と焦ったり、「休み時間の間に生理用品を買って戻ってこられるかしら」など業務に集中できなかったりした経験は、女性なら一度はあるでしょう。
そこで、企業の取り組みとしてトイレに生理用品を設置。
“万が一”の事態にあせらなくて済むので、精神的な負担緩和と業務の効率化が実現できました。
■勤怠システムで直接の申告を回避
生理休暇を取得するためには、当日までの自己申告が不可欠です。
しかし「上司が男性だから『生理』と申告するのは恥ずかしい。さらにその後、課長や部長、社長の承認まで得なければならないとなると……」と、自分が『今生理期間である』という情報がどんどん広まるのは気が引けるもの。
そこである企業では、生理休暇を取得しやすくするために勤怠システムを活用しました。
勤怠システムの中に「生理休暇」を取得できる欄があるので、コンピューターを通じて休暇を申請。上司への直接申告はもちろん、承認印をもらうために書類がたらい回し……という事態がスマートに避けられます。
■生理研修の実施
生理のことは、男性にはどうしても理解しがたい部分があるもの。
生理痛はもちろん、PMSなどのメンタル面、仕事への影響などは、性別を問わず認識する必要があります。
ある企業では、生理研修を定期的におこない、生理への理解を促進。
生理に関する知識を社員全員で共有することで、スムーズな生理休暇の取得を目指しています。
まとめ
生理休暇は、労働基準法で定められている制度です。
女性なら誰でも取得できる権利がありますが、実際は「生理なので休ませてください」とは言いにくいもの。
しかし最近では、働き方改革として、女性にやさしい環境を目指す企業が出てきました。
今はまだ物珍しい取り組みでも、「生理休暇は取得して当たり前」「トイレに生理用品があって当たり前」など定番化する日もきっと近いでしょう。